前田 | 平成27年度決算に関する知事の所見をお伺いいたします。
平成27年度一般会計決算は、歳入面では企業収益の持ち直し等による法人税の増や消費税の引き上げの平準化による増などにより、県税額は過去最高額に近づいている一方、臨時財政対策債を含めた実質的な地方交付税は3年連続して減少しており、歳入総額は前年をやや上回っている状況であります。
歳出面におきましては、国体等の開催経費の減があったものの、消費税増税に伴う市町村交付税の増100億円や、県庁舎建設整備費の増などにより、歳入総額は前年の6,836億円を0.8%上回っている状況であります。
県税収入が増加しておりますが、歳入に占める自主財源の比率34%は、昨年度33.9%、ちなみに全国で低い方から6番目でありますが、と同じ状況であり、脆弱な財政状況には変わりなく、財政調整基金の残高305億円も5年ぶりに増加したものの、依然としてピーク時、平成14年の601億円の半分となっております。
以上のような状況から、まず、知事に対して、平成27年度決算を踏まえた財政運営に対する所見をお尋ねいたします。 |
知事 | 平成27年度決算については、今、委員がお触れになられましたように、企業収益の持ち直し等による税収の増加、さらなる収支改善対策の効果によりまして、減少を続けておりました財源調整のための基金が5年ぶりに増加に転じるなど、財政健全化に向けて一定の進展が図られたものと考えているところであります。
しかしながら、本県の財政を取り巻く環境は、依然として厳しい状況が続いているところであり、本年度の中期財政見通しにおいては、国の退職手当債の発行基準の見直しによりまして、財源調整のための基金残高の将来見通しの下方修正を余儀なくされたところであります。
また、実質的な公債費の長期シミュレーションにおいては、現在の財政構造がそのまま続いた場合の将来的な公債費の高止まりのリスクが示されているところであります。
こういったことから、これまでの財政健全化の取組をさらに一歩前進させ、将来世代に負担を先送りすることのないように、中長期的な財政構造改革に着手をしていかなければいけないと考えているところであります。 |
前田 | 全般的な所見ということで答弁をいただきました。
私も一定決算を見させていただく中で、当然予算に対する決算ですから、予算の執行状況というものを中心に見させてもらいましたが、苦しい中でも、今、知事がおっしゃったようないろんな工夫、スクラップ・アンド・ビルドも含めて、また集中的に投資する時は投資しながら、厳しい中でしっかり頑張っているというふうな認識を私も持たせていただいております。少し細かに質問させていただきたいと思います。
まず、先ほど、知事の方からも述べられましたが、長期的な視点の中で収支が悪化している要因についてお尋ねしたいと思います。
先月公表された中期財政見通しでは、平成32年度末では昨年の試算時より約160億円悪化するとのことで、その主な要因は、今、知事がお話しになりましたが、退職手当債の発行基準の見直しにあると聞いております。そのため、実質的な公債費の長期シミュレーションを行い、将来の借金返済の状況を確認したところ、現在の投資水準を維持し、退職手当の影響を借金により補った場合、平成49年度では現在の公債費の水準約400億円から50億円を超える負担となっているというシミュレーションが出されております。今回の長期シミュレーションによって、公債費が膨らむ要因について、改めてどのように考えているのか、ご答弁をいただきたいと思います。 |
総務部長 | 今回のシミュレーションにおきましては、公債費が高止まりする要因は、主に教育部門におけます職員の大量退職、退職者数の増加が生じることによりまして、退職手当の負担が高止まりすることにあります。
これまでは退職手当として必要な額の一部を県債の発行で対応し、財政負担を先送りしてまいりましたが、このような対応を続けた場合、実質的な公債費は、ピーク時において現在の水準から50億円を超える増加が生じるものと見込んでおります。
これを回避しますためには、中長期的に毎年度約50億円の収支改善を図っていく必要があろうと考えているところでございます。 |
前田 | 総務部長から答弁があったような形で収支が悪化したということ、そして、それに対してしっかりと取り組んでいきたいということでありますけれども、やっぱり財政見通しを立てる時に、当然その時、その時の中で、今言ったような国の状況、国の指示の中でいろんな見直しがあって見通しが変わるということはあると思うんですよね。しかし、やはりそういうことも踏まえながら、一定きちんとした財政見通し、将来的なものを見立てていくことは非常に大事だと思っておりまして、退職債の件では当然そうなのかもしれませんが、全般的に見て、今立てている中期財政見通しというものが、果たして2年、3年後を含めたところで、しっかりとこのとおりやれていくかということについては、もう少し検討が必要じゃないのかなと思っています。
何となれば、一つの事例を挙げますと、昨年度、私も個人質問をしましたが、長崎県公共施設等総合管理計画、公共施設の総合管理計画を国の法律によって自治体もつくるように求められております。今、鋭意その基本方針までできて、これから個別の基本計画に入っていくと思うのですが、既に昨年の12月に管理基本方針が発表されておりますが、その中で言うと、総務省が提供する試算ソフトによると、公共施設の更新に対して本県の場合、建物に関して言えば、使用期間が41年間のケース、40年間で5,331億円、年平均133億円の費用がかかるという試算、もしくは、これが使用期間65年になると、それでも年平均97億円がかかる試算になっております。あわせてインフラの整備のほうについては、今後50年間で約3,150億円、トンネルでは約189億円の費用が見込まれるということで、現在の長期財政見通しは、本年度の決算、維持補修費53億円、この額をベースとしながら、当然それをベースとして見ておりますが、今話したように、施設の維持管理だけでも毎年200億円近くのお金がかかる見込みになっています。 |
前田
(続き) | 当然、これをどう減らしていくかということがこれからの課題だと思うのですが、しかし、そういうものが、今現在の設定の中では、長期財政見通しの中には入っていませんので、当然これは2年~3年後、この総合管理基本計画ができ上がった時には、その維持負担費というものが反映されたものになろうかと思います。その時に、また見通しが変わりますよということになるのであれば、そのあたりも含めたところでしっかりした財政見通しというものを立てていただきたいということをこの際要望しておきたいと思います。
また、公共施設等総合管理計画については、基本方針を見させていただきました。せんだって質問した際も、これは単に10年~20年先のコストの負担をどう平準化するかということではなくて、また、適時に維持管理する、もしくは廃止すると、こういうことだけではなくて、地域経営として施設の管理、インフラの整備をどうやっていくかという根本的な議論をやったところが、この公共施設総合管理計画が生きてくるんだという指摘をする中で見させていただきましたが、そういう意味では、まだまだ基本、原点に返った検討というのが少し浅いのかなと思っています。 |
前田
(続き) | 例えば、以前から私も意見として述べていますが、交通局についてです。これを読ませていただくと、現状のとおりの状況で、これから管理に関する基本的な考え方を示し、そして、それに対するコストがこれからはじかれていくと思います。
しかしながら、全国で唯一長崎県だけが持つ県営バスが、今後どういう方向に進もうとしているのか。生活弱者や交通弱者がいる中で、県営バスの役割を拡充するのか、それとも現状維持するのか。もっと言えば、今現在、3市しか走っていない中で民間に移譲できるのではないか。そういうところに立った議論を求めているわけでありまして、これは所管の委員会の中でもそこはしっかり議論しますと言っていますが、現在のこの計画の中ではそういうものにはなっておりませんし、せんだってからの報道によると、既に長崎駅や諫早駅のバスターミナルのイメージ図も出てきておりますが、そういうものは、本来は交通局、公営企業としてのありようがどうあるかというものを見越した上で建てていくものだと思っていますので、そういう意味においては部局ごとの計画となってくると、私は申しわけないけれども、非常に緩やかな甘いものになりがちだと思いますので、ここはしっかり管理というか、執行部としての考え方を各部に投げ返すような形でこの総合管理計画というものをつくっていただきたいということを、この際要望しておきます。 |
前田
(続き) | 続きまして、平成27年度の決算を財政指標、基金残額等、他県との比較によって本県財政運営の課題について、答弁をいただきたいと思います。
財源対策のため、基金残額305億円は、九州各県において、リーマンショック、平成20年以降の平成21年から平成27年度を比較すると、ほとんどの県が基金は増額をしております。しかし、本県は、今回の決算では増額を10億円しているものの、100億円以上大きく基金を取り崩しており、ピーク時の約半分の額となっているところであります。また、人件費や扶助費などの義務的経費の割合も昨年度より高くなり、経常収支比率も昨年度より悪化していることから、財政の硬直化はさらに進行しているものと考えられます。
このような財政状況を踏まえ、本県の財政運営の課題は、他県と比較してどのように分析されているのかをご答弁いただきたいと思います。 |
総務部長 | 他県との比較での分析でありますけれども、九州各県の平成22年度から平成26年度の決算を分析してみますと、長崎県の財政は他県と比較して次のような特徴があろうと考えております。
まず、本県では、製造業が少なく、所得の低い法人が多いことから、県税収入が少ない一方、標準的な財政規模に対しまして歳出の規模感が九州の中で一番大きい状況にございます。これは離島や半島が多く、振興局や学校、警察署の効率的な配置が難しいことから、県民1人当たりの人件費が2番目に高く、また、社会保障関係経費が主なものであります扶助費及び補助費等においても高い方から2番目にあることなどが要因と考えております。
さらに、単独の建設事業につきましては、他県では大幅な削減が進められている中、本県は一定規模を維持してきましたことから、九州2番目の高い水準になっており、このことも大きな要因と考えております。
この結果、いわゆる貯金に当たります財源調整のための基金については、長崎県、宮崎県が減少している一方、その他の県については増加しているような状況にございます。
このような歳入・歳出における財政構造の他県との違いが基金残高の大幅な減少や、将来的な公債費の高どまりのリスクの要因であると認識をいたしているところでございます。 |
前田 | ついてはどうするのかということをお答えいただきたいわけですが、そこは次にまた質問したいと思います。
総務部長の説明のとおりで、財政構造の本県の特徴的な事例によって、他県では基金を積み上げてきているが、本県においては、これは雇用を守るということを含めて、一定公共事業も出していくんだということを含めた積極的な基金の取り崩しだという認識をいたしておりますが、しかし、やはり今後、将来を考えた時には基金というものをしっかり積み上げていくということも大事だと思います。
さりとて、公共事業等の県の単独のものをいかに出せるかというのは、そこはバランスの問題だと思いますが、非常に難しいさじかげんになると思いますが、その点には今後も鋭意取り組んでいただきたい。
それと、中期財政計画の見通しの中で、やはりもう一つ高いレベルのもので今後頑張ってほしいということを踏まえた時、財政調整3基金を150億円ぐらいこの5年間で取り崩すような形になっていますが、しかし、他県の状況を見る中で、財政調整基金を極力というか、取り崩さないと、ゼロで頑張るんだという姿勢もひとつどこかに持っておく中で臨んでほしいことを要望しておきたいと思います。
それでは、これからどうするかということを含めて、今後の財政運営の見通しと今年度決算を踏まえての来年度の予算編成方針を財政全般の質疑の取りまとめとして質問させていただきます。
これまでの財政運営のフロー面、ストック面での課題について確認を行ったが、今後も持続可能な財政運営を行うためにはどういったことに留意するとともに、平成29年度の当初予算編成に当たって、どのような考え方で臨まれるのかをご答弁いただきたいと思います。 |
知事 | 将来にわたって持続可能な財政運営を確保してまいりますためには、今、ご議論をいただいておりますように、中長期的に毎年約50億円の収支改善を実現していくことが必要となっているところであります。
このため、来年度の予算編成に当たりましては、普通建設単独事業をはじめとして、各種事業の選択と集中をさらに進めていかなければならないと考えております。
また、財政の構造を変えてまいりますためには、単に事業規模を圧縮するだけでは限界がありますため、大局的な視点に基づき、分野を問わず、事業、施設、職員配置のあり方そのものまで踏み込んで、具体的に検討すべき項目を明確にしていく必要があるものと考えております。
そのため、財政構造改革のための総点検を実施いたしまして、早期に着手が可能なものについては速やかに実行に移していかなければならないと考えております。
しかしながら、そうした一方で、来年度は県の総合計画チャレンジ2020の2年目に入りますことから、初年度の施策をしっかり分析しながら、これらの施策を着実に県政の発展に結びつけていくための見直しを行い、施策効果の早期発現を目指してまいりますとともに、新たな施策の構築についても積極的に進めていかなければならないと思います。
今後、県議会でのご議論等も踏まえながら、地方創生や離島振興に向けた力強い施策の展開と財政構造改革の両立を実現できるように全力で取り組んでまいりたいと考えているところであります。 |
前田 | 知事の答弁の中に、財政構造改革のための総点検期間だというような発言がありましたので、そのことについては後ほど部長の方からもう少し詳しく、総点検であるならば、その手法というか、そこと、もう一つそれに対して、じゃ、どんな目標を掲げるかというのは答弁いただきたいと思いますが、その前に、知事が冒頭、普通建設単独事業費に対しても切り込んでいかなきゃいけないんだというような話がありましたので、ちょっとこの点を掘り下げさせていただきたいと思っています。
九州各県の比較の中でも普通建設単独事業費は、本県はこれまでも離島等の地理的ハンディも含めたところで、厳しい財政運営の中でも、各県と比べたところ、非常に高い数値で、ない財布の中でしっかり出してきているという認識をしておりますが、今般、知事がそういった普通建設単独事業費にも切り込むんだというようなことを言われ、これもまた新聞記事になっているのですが、公共事業すべてが悪だということは、今さらそういうことを議論する必要はなくて、やはり必要なものは必要ですし、そこは雇用につながるということ、公共事業が経済効果として1.67倍、そして、100億円の公共事業が動くと、1,300人近くの雇用誘発効果があるということを踏まえた時に、一定本県においては、そうは言いつつも普通建設単独事業費というものを維持していかなきゃいけないという認識をいたしております。
ただ、これは公共事業全体、国からしっかりとお金を取ってきて、公共事業全体がキープされているということであるならば、そこは今まで無理をしてその費用に充てていたのですから、ほかのものに回すということがあってもいいと思っているので、この全体的な決算、そして当初予算の中で、公共事業というものがどういう形で推移し、そしてしっかりと公共事業に対して財源が充てられているんだよということを数字として少しご説明をいただきたいと思います。 |
知事 | これまでの財政運営に当たっての基本的な考え方について改めて申し上げますと、平成18年度以降、三位一体改革がありまして、地方財政は危機的な状況に直面をいたしました。地方交付税等が大幅に削減される中で、財源確保に苦慮したわけでありますけれども、長崎県は、幸いそういった時点では一定の基金規模が確保されておりましたので、片方で増税に向けた検討が進められる中、できるだけ軟着陸を目指していこうと。地域経済の下支えは下支えとしてしっかり、できるだけ確保していこうという考え方で予算編成に取り組んできたところでありました。
そういった意味で、普通建設単独事業等についても、できるだけ規模感を持って確保していこう、議会でもそういった趣旨のご議論をいただいて今日に至ったわけでありますけれども、なかなか現状を見ますと、改めて退職手当債の取り扱いが変更されたことによって、年間50億円の下振れが生じてくるということであります。
それともう一つは、増税に向けた取組について、一定国において税収確保が図られるということになると、社会保障財源等についても一部地方財政に食い込んできたところがありましたけれども、それも緩和される可能性があるのではないかと、こう期待をしていたところでありますが、なかなか難しいという状況になりつつあります。
したがいまして、やはり今の状況の中で、財政の健全性は維持をしていかないと、中長期的な財政運営が難しくなると。そういうことから、この普通建設単独事業も含めて聖域とすることなく、総合的な観点からやっぱり事務事業の集中、重点化を図っていく必要があると考えているところであります。 |
前田 | 知事の方から答弁をいただきましたので、次に入りたいと思います。おっしゃるとおりだと思いますので、非常に厳しい中、しかし、そうは言っても地区地区の中で、やはりまだまだインフラ整備も含めたところでの期待というか、ニーズ性はありますので、そこはしっかりと党として、会派としてもこれから要望はしていきますので、知事が言われた総合的な判断の中で取捨選択をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。 |